死してなお溢れ出る岡本太郎の生命力【自分の中に毒を持て】
今日は岡本太郎さんが記した『自分の中に毒を持て』のブックレビューします。
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【あらすじ】
本著の冒頭がこのような文言から始まる。
いのちを賭けて運命と対決するのだ。
そのとき、切実にぶつかるのは己自身だ。
己が最大の味方であり、また敵なのである。
しかし、現状維持、自己保身をしてしまうのが人間の性である。
そして、日本のことを「大きな一つの村」と称して、出た杭は打たれるのがこの日本社会であることを岡本氏は嘆いている。
だが、それでもなお
「出る杭でありなさい」
と岡本太郎氏は読者を鼓舞している。
本著では、岡本氏が辿ってきた人生を読者に明かし、ロードマップに沿った当たり障りのない人生を選択するのではなく、たとえ結果がついてこなかったとしても、
己の血がたぎるような道を選択して歩んだ方が自分の人生を生きたことになるだろうと読者に迫っている。
そのためには流される生き方ではなく、流れに逆行する生き方をする必要がある。
だからこそ、己の人生を逆張りをするために自分の中に毒を持たなくてはならない。
【背景】
岡本氏は幼少期、生徒は教師に絶対服従という日本の学校教育に疑問を持ち、小学校を3回転校した。
ガキ大将に媚びることも嫌い、一人大将としてつっぱっていたようだ。
そして、18歳で画家になるために親の反対を振り切って、フランスに出て行った。
フランスでは普通のカフェで青年たちが政治についての論争している。
岡本氏も画家の友人たちと芸術や政治についてコーヒー一杯で熱く語り明かしたという。
フランスでの日々が岡本氏の情熱を大いに沸き立たせた。
そんな自分の人生を歩んできた岡本氏が、閉鎖された日本社会を嘆くのは当然のことと言える。
岡本氏だからこそ言える熱い言葉がこの本には詰まっている。
【個人的に刺さったポイント】
恥ずかしながら、本著を読むまで私は岡本太郎さんについてよく知りませんでした。
しかし、本著を読み進めていくうちに、岡本太郎さんの力強い生き様に魅せられて、心が激しく揺さぶられました。
特に私の心が揺さぶられた箇所を3つ紹介したい。
他人の目も、自分の目も気にするな
何か、これと思ったら、まず、他人の目を気にしないことだ。また、他人の目ばかりでなく、自分の目を気にしないで、萎縮せず、ありのままに生きていけばいい。
"他人の目"だけでなく"自分の目"を気にしないという言葉に心が刺さりました。
私は何か事を始めても、途中で躓くと、「やっぱり今始めても遅かったんだ」と諦めのマインドがチラついていました。
しかし、そんな弱気の心すらも無視して、自分のやりたい事、やり遂げたい事に全てを賭ける事を教わりました。
そう、他人の目も、自分の目すらも気にしない。
芸術は人間になくてはならないものだ
この世界に必要なことは、芸術・政治・経済の三権分立である。
正直、この言葉を目にした時に、「芸術って、そこまで大切なものなのか?」と疑問に思ってしまいました。
しかし、この後の岡本氏の言葉
国や組織ばかり太っても、一人一人の中身は逆に貧しくなってしまったではないか。
失った人間の原点をとりもどし、強烈に、ふくらんで生きている人間が芸術家なのだ。
自分も経済や必要に追われて、芸術的な人間性をお座なりにしていたということを思わされた。
実際日本は余裕がない社会になっている。
一人一人が芸術的な感性を膨らましていくことが日本人を本当に豊かにすると教えられた。
「死」を現前にしたときの清々しさ
人間本来の生き方は無目的、無条件であるべきだ。それが誇りだ。
死ぬもよし、生きるもよし、その瞬間にベストをつくすことだ。現在に、強烈にひらめくべきだ。未練がましくある必要はないのだ。
私はクリスチャンであるから、この人生に目的がないというところは共感できないが、生に固執せずに今やるべきことに全てを賭ける姿勢にはただただ尊敬の念を抱いた。
ここまで本気で今を生きることができたらさぞ清々しいことだろう。