ライフスピード
車椅子に乗るようになって時間がゆっくり流れるようになった。
部活に勉強に頑張っていた中学時代も、
全てのやる気がなくなってゲーム三昧だった高校時代も、
周りのスピードになんとか合わせていた大学時代も、
フラフラの足で踏ん張ってた社会人時代も、
ずーっと何かに追われていた。
うん、余裕がなかった。
いつもギリギリ、いやアウトの方が多かったか。
なのに、電動車いすに乗るようになって心にゆとりが生まれた。
時速6キロしか出ないのに、
バッテリーは15キロしか保たないのに、
電動車いすになってから遅刻したことはほとんどない。
ゆとりが生まれた理由は3つある。
①「外出先で歩けなくなる」という不安から解放された。
疲れると足を引きずり出す。
「動かなくなったらどうしよう」という不安が襲ってきて、なかなか遠くへは行けなかった。
電動になったら、動ける範囲は決まってるから、その範囲を安心して移動している。
バッテリーの容量がもっと増えるといいなぁ。
②車いすは時速6キロしか出ない。それが機械の限界だと知っているから、客観的に逆算して、出発時刻を決められるようになった。
歩けていた頃は、急いでいるのに動かない足にイライラして、「病気にさえなって居なければなぁ」と現実を直視できなかった。
遅刻しても、「病気だから仕方ないでしょ」という言い訳ばかり。
車いす移動になって「自分は時速6キロでしか移動できない」と受け止めて、縛りがあるからこそ余裕を見て行動するようになった。
③自分が障がい者であると自覚できた。
杖を突いていた時ですら、電車の中で杖を隠していたことがあった。
健常者に紛れ込もうとしていた。
でも、もう車いすだ。
誰がどう見たって障がい者だ。
隠れようがない。
でも、「それでいいんだなー」と思えるようになった。
ぶっちゃけ、歩けていた時よりも今の方が楽だ。
まだ人からの見られ方とか気にしちゃうけど、今の自分が結構好きかな。