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ブックレビュー 【諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない】

今日は為末大さんが書いた『諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない』(プレジデント社)のブックレビューをしたいと思います。

 

諦める力勝てないのは努力が足りないからじゃない【電子書籍】[ 為末大 ]

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この本との出会いは、24歳の時に仕事を辞めるか迷っていた時に、同僚が貸しくれたことだった。

本の冒頭には、

 

「諦める」という言葉の語源は「明らめる」

 

とある。

諦めることは一般的に、「終わる」「逃げる」などの否定的なイメージを持ちがちである。

しかし、為末さんはそうではなく、「自分自身の能力や状況を理解し、今の自分の姿を悟ることである」というイメージを持てるのではないかと説く。

 

為末さんは高校時代、陸上の花形である100メートル走から、400メートルハードルに競技変更した。

その理由は早熟であったことで自分のタイムが高校になって伸び悩んでいたことと、同世代の世界のアスリートが9秒台に近いタイムを出す姿を見て、「100メートルではトップに立つことは無理かもしれない」と悟ったことである。

そして、自分の体格ならハードルに適しているし、当時のトップの選手の走りに無駄があると見て、これならトップを狙えると考えて400メートルハードルに競技を変更した。

これに関して為末さんは、

 

目的さえ諦めなければ、手段は変えてもいいのではないか。

 

と言っている。「勝つこと」を諦めたくなかったから、手段である競技を変えたのだ。「勝ちにくい」100メートル走から、「勝ちやすい」400メートルハードルに勝負の場を変えた。勝つための戦略である。

しかし、日本には「諦めなければ夢は叶う」という美学が存在する。「続けていれば能力が開花するかもしれない」「ここまでやってきたのにここで辞めるのはもったいない」と諦めることを引き留める風潮がある。

 

ここで、私の中学時代の苦い経験を紹介する。

私は当時人気だった「テニスの王子様」に憧れてテニス部入った。しかし、テニスはとても下手だった。努力はすれども上手くならない。シングルスでは1年間誰にも勝てず、後輩にも負ける始末。先輩や同期、後輩にも馬鹿にされた。でも、悔しくて見返したくて続けた。

いや、正直言えば、辞めることで「逃げた」と思われることが怖かったから辞められなかったのである。

 

結果、自分を追い込みすぎてしまい、今の病気になるきっかけとなった。

 

本の中でアメリカのある大学の経済学部では、入学して1年経った段階で、多いときは半数に上る学生を進級させないという話が紹介されていた。意外にも学生からは「経済学が自分には向いていないと早い段階で分かってよかった」と好評らしい。

 

あの頃思い返せば、部活の先生に「お前にはテニスは向いていない」とストップをかけてもらいたかった。

病気になった時、部活を辞めるきっかけができて、「助かった」という思いが多少あった。

15年以上経った今では部活のメンバーや顧問に対する恨みは持っていない。

ただ、自分が教師の立場となった現在は、「諦める」という選択肢を学生たちに提示することが時には必要であると考えている。僕のような子を出さないために。

 

アメリカやカナダでは部活を掛け持ちすることが普通である。しかし、日本は専業で行うことが普通である。これには、意見が分かれると思うが、私は前者の方がいいと考えている。何が自分に合うかは分からない。

 

為末さんは「今の人生の横に走っている別の人生がある」と言っている。「今の人生が唯一」と思っていたら、その道が断たれたときに行き場がなくなってしまう。人生のオプションを持っていることは必要であると説いている。 

 

この話は部活の掛け持ちと話が近いと感じた。一つがダメでもまだ道があると分かっているならば、一定の余裕が生まれるのではないだろうか。苦しい時ほど人間は視野が狭くなるものである。

オプションを持っておくことは逃げ道を用意するというよりは、自分が向いている場所を自分の中で今の場所に限定しないことだと私は考えている。

 

そして、為末さんは「やめる」「諦める」という言葉をまったく違う言葉で言い換えている。

 

「選び直す」「修正する」

 

『そうすれば、多くの人にとって「やめる」「諦める」という選択肢が、もっとリアルに感じられるるのではないではないだろうか。』

 

最近、私も諦めることがあった。思い悩んでいたが、この本を再読して、諦めたからこそ次に進めるのだと背中を押してもらった。