ブックレビュー 【野村のイチロー論】
今日は『野村のイチロー論』(野村克也著 幻冬者)のブックレビューを書きます。
価格:1,210円 |
まず、私はスポーツを見るのが大好きです。中でも野球がスポーツの中で1番好きです。
この本は、今年亡くなられた野村克也さんがイチローさんについて語られている本です。
この本が出版されたのが2017年の12月ですから、まだイチローさんが現役で活躍されていました。
驚くことに野村さんとイチロー選手には接点がほとんどなかったようです。この本では、野村さんが離れた位置から見ていたからこそ忖度なく、イチロー選手を評価しています。まず本の書き出しに驚かされました。
正直に言う。
私はイチローが好きではない。
世界のイチロー選手にこんなことが言えるのは日本では野村さんくらいだよなと思いました。ちなみに、私は野村さんもイチローさんも大好きです。
イチロー選手の仕草や態度に加え、自身の野球観の違いから、イチロー選手を嫌っていたそうです。
しかし、野村さんは、イチロー選手が天才であることを素直に認め、選手としての能力に対して最大級の賛辞を送られている。そういうところが素晴らしいなと感じました。
野村さん自身もプレイヤーとしても監督としても実績を残された方である。それでも、固定観念を嫌い、自分で考えて良いと分かったものを素直に受け入れるしなやかさをずっと持たれていました。
本の中では、イチロー選手の技術の高さに触れ、天才イチローがいかに凄いかを自身の現役時代や周りのプレイヤーと比較して解説している。また、体の強さ、プロ意識の高さも評価している。
野村さんがヤクルトの監督時代に、日本シリーズでオリックスと戦う際に、どうやってイチロー選手を抑えるかで、1日ミーティングしたと書いていました。
あと、イチロー選手のメジャーリーグでの活躍により、メジャーの野球を変えたとまで書いていました。
やっぱり野村さんはイチロー選手をよく見続けていたのですね。
では、野村さんはイチロー選手のどこが嫌いだったのでしょうか。それについて野村さんは
「チームより自分優先」
とイチロー選手の姿を批判していました。野球はチームスポーツなのだから、自分だけ良くてもチームが勝たなければ意味はないという考えが野村さんにあるからです。
これは、イチロー選手の「自分がヒットを打つことで、チームに貢献することになる」という考えと、野村さんの「チームに貢献するためにヒットを打つ」という考えの違いからきています。
イチロー選手のオリックス時代の恩師である仰木監督の教えが根底にあるようです。イチロー選手の個性が仰木監督の教えにフィットしたから、選手としての芽が出て、ここまでの活躍をされていると思います。
同時に、野村監督の元でイチロー選手が育ったらどのような選手になっていたかを考えるのも面白いです。
ただ、本の終盤には、イチロー選手の変化について野村さんは触れています。
・WBCで日本を背負って戦った経験
・ヤンキースに移籍して、勝利主義のチームの中で外野手5番手という役割を甘んじて受け入れた経験
・マーリンズで先発での出場は減り、代打としての役割が増えた経験
イチロー選手がチームのために戦う姿もちゃんと野村さんは見続けていました。
私の勝手な考えですが、野村さんは本当はイチロー選手が好きだったのではないかと思います。
最後に本を読んでいて個人的に学ばせてもらった箇所を紹介します。
イチローさんが残した言葉に対して、野村さんが私見を述べるセッションの中で、野村さんが強くイチローさんに同意した場面があります。
イチローさん「自分がわからないことに遭遇するときや、知らないことに出会ったときに、「おっ自分はまだいける」と思います。」
野村さん「無知無学を自覚することが、成長と進歩を促すのだ」
自分が知らないことを受け入れ学ぶ。
お二人はそれを素直にできていたからそこまでのプロフェッショナルになられたのだと感じました。
私が大好きなお二人の本を改めて読めて幸せでした。